ヨーロッパ囲碁ニュース

ヨーロッパの囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。

囲碁ニュース [ 2021年12月7日 ]

欧州選手権、シクシン4pが優勝

欧州選手権が11月23日から12月5日にかけてオンラインで開催された。
欧州選手権は本来、夏の欧州囲碁コングレス中に開かれる。コングレスは、昨年、今年と新型コロナウイルス禍の影響で中止されたため、2年連続でのオンライン開催となった。

大会は予選ステージと決勝ステージからなる。決勝ステージには、昨年の欧州選手権の結果を考慮してイリヤ・シクシン4p(ロシア)、アリ・ジャバリン2p(イスラエル)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、タンギー・ルカルヴェ1p(フランス)、アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)、アントン・チェルニフ7d(ロシア)、バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d(フランス)の8人がシード。

一方、予選ステージには、これに続く欧州ランキング上位者16人が参加。4つのリーグに分かれて競い、先日プロになったばかりのスタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)に加え、ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、デュシャン・ミティッチ7d(セルビア)、ニコラ・ミティッチ7d(セルビア)、レミ・カンパニー6d(フランス)、フレデリック・ブロンバク6d(スウェーデン)ヨナス・ヴェルティケ6d(ドイツ)、ヴィクトール・リン6d(オーストリア)の8人が枠抜けした。

決勝ステージでは、アマ勢としてポドペラ7d、ニコラ・ミティッチ7dが1回戦を勝ち抜いた。快進撃が期待されたが、2回戦でそれぞれジャバリン2p、カチャノフスキー2pに細碁を敗れた。プロの壁は厚い。ベスト4に残ったのはシクシン4p、ジャバリン2p、リジー2p、カチャノフスキー2pの4人。このうちリジー2pは前回不出場だったが、シクシン、ジャバリン、カチャノフスキーの3人は昨年に続くベスト4入りで、安定感が光る。

準決勝三番勝負を経て決勝三番勝負に勝ち上がったのは、シクシン4pとカチャノフスキー2pの二人。これをシクシン4pが黒番中押勝、白番2目半勝の2連勝で制し、3連覇、通算では8度目の優勝を果たした。

改めて第一人者の力を見せつけたシクシン4p。(写真:ロシア囲碁連盟)

ジャバリン2p とリジー2pの3位決定戦はジャバリン2pが2勝1敗で勝利した。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年12月2日 ]

新鋭チェルニフ7d、ロシア新チャンピオンに

ロシア選手権決勝ステージが11月18-21日にかけてサンクトペテルブルクにおいて開催された。決勝ステージには、昨年の成績優秀者4人と予選枠抜け4人が参加し、リーグ戦方式7回戦でチャンピオンの座を争う。

優勝戦線に躍り出たのは、欧州トップのイリヤ・シクシン4pと新鋭アントン・チェルニフ7d。二人は第6回戦において全勝で激突した。この対局を若手のチェルニフ7dが3目半勝し、この時点で初優勝を決めた。チェルニフ7dは最終局にも勝って見事全勝優勝を果たした。

チェルニフ7d(左)とシクシン4pが対局を検討。中央はムロムツェフ5d。(写真:ロシア囲碁連盟、以下同)

チェルニフ7dは先日のプロ入段手合でも手厚くヨセに強い碁を武器に素晴らしい内容で準決勝まで勝ち上がった。プロ入段手合は来年も開かれる予定で、現在のところ次期プロ候補の最右翼ではないだろうか。

なおチェルニフ7dと共に先日のプロ入段手合に参加したヴィアチェスラフ・カイミン6d、アレクサンドル・ムロムツェフ5dも本選手権では大健闘。中でも、ムロムツェフ5dはアレクサンドル・ディナーシュタイン3pに勝利し、4勝3敗で同率3位に入賞した。

ムロムツェフ5d(左)とカイミン6dの対局。
優勝のチェルニフ7d。

グランドスラム予選が開催

今冬は欧州トップレベルの大会が目白押しである。11月23日には欧州選手権がオンラインで開幕。本来は夏のコングレス中に対面式で開かれるはずが、中止になったためにオンラインとなった。24人が参加し、12月5日まで2週間にわたり開かれる。

続いて12月16-19日にかけて、セルビア・ベオグラードにおいてグランドスラム大会が行われる。こちらは16人が参加するが、このうち3人の参加者を決める予選会が11月11-12日にかけてオーストリア・ウィーンで開かれた。大会には5-7dを中心に10人が参加。5回戦の結果、全勝者のない大混戦となったが、4勝1敗でオスカル・バスケス6d(スペイン)、マティアス・パンコケ5d(ドイツ・イタリア)、ニコラ・ミティッチ7d(セルビア)の3人が並び、仲良く枠抜けとなった。パンコケ5dはドイツとイタリアの二重国籍を持ち、パンダネット主催の欧州チーム選手権ではイタリア・チームに所属している。ヴィクトール・リン6d(オーストリア)やニコラおよびデュシャンのミティッチ兄弟といった強敵を倒して見事に勝ち抜き、同時に6dに昇格した。

グランドスラム予選会参加者。前列右から枠抜けのニコラ・ミティッチ7d、バスケス6d、パンコケ5d。

なお、グランドスラム予選に続いて11月13-14日にはウィーンでオーストリア・オープン大会が開催された。33人が参加し、このうち5d以上が11人を占めるハイレベルな大会となった。こちらも全勝者なしだったが、バスケス6dが4勝1敗で優勝。2位はやはり4勝1敗のルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、3位はリン6d、4位はバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d(フランス)だった。

オーストリアでは大会直後にロックダウンが段階的に再開された。対面式イベントが今後も継続されるかが注目される。

オーストリア・オープン上位入賞者。真ん中が優勝のバスケス6d、左が2位のポドペラ7d、右が3位のリン6d。
関西棋院の黎ティン初段(ウィーン在住)の双子の娘さん、リリーちゃん(左)とチェリーちゃんは、それぞれ18kと28kで出場。4歳とは思えない立派な打ちぶりである。

今年のオーストリア・オープン大会は、今年2月に亡くなったヘルムート・ヴィルチェック氏に捧げられた。ヴィルチェック氏は6dと欧州でも指折りのプレーヤーだったほか、組織面でも大きく貢献。特に毎夏のイシュグルにおけるキャンプのメインオーガナイザーだった。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年11月2日 ]

欧州青少年選手権、オンラインで開催

欧州青少年選手権が10月15-17日の3日間、オンラインで開催された。年齢別に3カテゴリーに分かれており、12歳未満は51人、16歳未満は53人、20歳未満は27人が参加した。

昨年は3月半ば、新型コロナウイルスの感染拡大が問題となり始めた時期の開催だった。一部選手はオンラインだったものの、大半の選手はクロアチアにおいてなんとか対面式で対局した。現在ようやく対面式イベントが再開し、その数を増やしつつあるものの、百数十人が集まるような大規模大会の組織は相変わらず容易ではない。

各カテゴリーの結果は以下の通り。

12歳未満

順位 名前 段位 勝敗
1 ヴィアチェスラフ・シュパコフスキー 1d ロシア 6-0
2 ルスラン・タラソフ 2d ロシア 5-1
3 アルトゥール・ギマディエフ 2d ロシア 4-2
4 キリル・マカロフ 2k ロシア 4-2
5 アンドレイ・イリチェフ 3k ロシア 4-2

新鋭シュパコフスキー1dが全勝優勝を果たした。昨年5位のタラソフ2dが2位、昨年4位のギマディエフ2dが3位に入賞した。このカテゴリーでは毎年ロシアが圧倒しており、今年も上位7位を独占。ロシア以外の最高位はトルコのアルペル・スラク1k(8位)だった。

16歳未満

順位 名前 段位 勝敗
1 アレクサンドル・ムロムチェフ 5d ロシア 5-1
2 エゴール・ラヴロフ 4d ロシア 5-1
3 フセヴォロド・オフシェンコ 4d ウクライナ 4-2
4 アレクセイ・イゴニン 3d ロシア 4-2
5 ダヴィデ・ベルナルディス 4d イタリア 4-2

昨年5勝1敗で同率2位に泣いたムロムチェフ5dが、今年は同じ成績で優勝を果たした。昨年12歳未満で3位に入賞したラヴロフ4dが2位に食い込んだ。昨年12歳未満で優勝、今回も優勝の有力候補だったオフシェンコ4dは、最後の2ラウンドで失速し3位に終わった。

20歳未満

順位 名前 段位 勝敗
1 オスカル・バスケス 6d スペイン 6-0
2 アーヴェド・ピットナー 5d ドイツ 5-1
3 サフヴァ・メジン 4d ロシア 4-2
4 ギヨーム・ウジエ 4d フランス 4-2
5 ヴァシリー・ヤコヴレフ=チェルニシェフ 4d ロシア 4-2

スペイン出身でベルギー在住の強豪バスケス6dが全勝優勝した。2位は成長著しいドイツのピットナー5dだった。

欧州プロ入段手合:ポーランドのフレイラック7dが8人目のEGFプロに

欧州囲碁連盟(EGF)が開催するプロ入段手合が10月25-31日にかけてスウェーデンのレクサンドにおいて開催された。プロ入段手合が開かれるのは2019年以来2年ぶり。これまで、5回が開催され、以下の通り7人が入段している。

第1回 2014年 1.パヴォル・リジー(スロバキア)
2.アリ・ジャバリン(イスラエル)
第2回 2015年 3.マテウシュ・スルマ(ポーランド)
4.イリヤ・シクシン(ロシア)
第3回 2016年 5.アルテム・カチャノフスキー(ウクライナ)
第4回 2017年 6.アンドリー・クラヴェッツ(ウクライナ)
第5回 2019年 7.タンギー・ルカルヴェ(フランス)

手合いに参加できるのは、主に欧州ランキングで上位の16人。前回2019年にストラスブールで開催された際には、「第3回戦までダブルエリミネーション(2敗者敗退)で8人を選び、準々決勝以降はノックアウト」という方式だったが、今回は1回戦から決勝まですべて3番勝負というシステムが採用された。オンラインでの欧州プロ選手権をはじめとして、ここ数年は3番勝負を用いる大会が増える傾向にある。対局数が多くなれば、一発勝負の偶然性を避け、長い目で見た真の強者を選ぶことができる、という考えなのかもしれない。ただし、大会が一週間かかるのはやむを得ない。

参加者。(写真:Harry van der Krogt、欧州囲碁連盟、以下同)

参加者は以下の通り。

名前 段位
スタニスワフ・フレイラック 7d ポーランド
ルカシュ・ポドペラ 7d チェコ
ロブ・ファンザイスト 7d オランダ
バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア 6d フランス
アントン・チェルニフ 6d ロシア
ドミニク・ボヴィズ 6d ハンガリー
コルネル・ブルゾ 6d ルーマニア
オスカル・バスケス 6d スペイン
ヴィアチェスラフ・カイミン 6d ロシア
ヨナス・ヴェルティケ 6d ドイツ
レミ・カンパニー 6d フランス
ベンヤミン・トイバー 6d ドイツ
リュカ・ネイランク 6d ベルギー
アミール・フラグマン 6d イスラエル
エリアン=ヨアン・グリゴリウ 5d ルーマニア
アレクサンドル・ムロムツェフ 5d ロシア

前回と比べて、5人が新たに加わった。前評判が高かったのはランキング上位で先日の世界アマチュア選手権でも活躍したフレイラック7d、ポドペラ7d、ドレアン=ゲナイジア6dの3人。これに、バスケス6d、チェルニフ6d、カイミン6dといった若手がどこまで食い込めるか、という構図となった。

大会は中国ルールで行われる。アミール・フラグマン6d(左)とレミ・カンパニー6dの対局の地計算をフィンランド在住のス・ヤン6dが行う様子。カナダ在住のカンパニー6dはベスト4に進出する活躍。
ベスト4に食い込んだアントン・チェルニフ6d。優勝したフレイラック7dにもあと一歩に迫った。

こうした中で決勝に進出したのは、ポドペラ7dとフレイラック7dの大本命の2人だった。二人は前回大会でも入段が有力視されていた強豪である。

決勝3番勝負は激しい戦いに終始した。30日朝に打たれた第1局は巨大なコウが続出し、なんと397手にも及んだが、最後はポドペラ7dが6目半勝を収めて先勝した。続いて同日午後の第2局はポドペラ7dが先行、中盤でもうまく立ち回って決まったか、と思われたが、フレイラック7dがヨセで素晴らしい粘りを見せて半目差し切った。

決勝3番勝負第2局。フレイラック7d(右)が苦しい局面を挽回し、半目勝ちを収めてスコアをタイに戻した。

結果的に見ると、この勝利が大きかった。31日朝の第3局はフレイラック7dが冷静な打ち回しで完勝、EGF8人目のプロ、ポーランドからはスルマ2pに次ぐ2人目のプロとなった。フレイラック7dは、欧州では詰碁の強さで知られており、読みを武器に、難しい局面でも一歩も引かない戦いぶりが見事だった。ポドペラ7dは、2大会連続で決勝において涙を飲んだ。

入段を決めインタビューに答えるフレイラック7d(左下)。右下と右上は解説を担当したイリヤ・シクシン4pとアリ・ジャバリン2p。

入段手合の結果は以下の通り。

フレイラック フレイラック
(2-0)
フレイラック フレイラック
(2-0)
フレイラック
(2-1)
ムロムツェフ
カイミン バスケス
(2-1)
バスケス
チェルニフ チェルニフ
(2-0)
チェルニフ
(2-0)
トイバー
ネイランク ドレアン=ゲナイジア
(2-0)
ドレアン=ゲナイジア
ファンザイスト フラグマン
(2-0)
カンパニー
(2-0)
ポドペラ
(2-0)
フラグマン
カンパニー カンパニー
(2-0)
ボヴィズ
ブルゾ ヴェルティケ
(2-1)
ポドペラ
(2-1)
ヴェルティケ
グリゴリウ ポドペラ
(2-0)
ポドペラ

なお、次回入段手合の開催は未定となっている。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年10月22日 ]

ドイツ選手権、クレマー6dが優勝

ドイツ選手権決勝ステージが10月8-10日にかけて東部イエナにおいて開催された。昨年の決勝ステージは、新型コロナウイルス禍のために開催されず、今年は対面式で、2020-2021年の統合チャンピオンを選ぶことになった。

今回の決勝ステージには、前回2019年の決勝ステージの成績優秀者4人と、昨年10月に開かれた予選を勝ち抜いた4人の合計8人が参加した。ドイツ選手権はコミが7目で、ジゴ(引き分け)も可能であるのが特徴である。

6回戦を終えた時点で、4勝2敗で5人が並ぶという例を見ない大混戦となったが、最終局でルカス・クレマー6dとヨナス・ヴェルティケ6dがそれぞれ勝利。両者の直接対決で勝利しているクレマー6dが優勝となった。クレマー6dは2013-2016年に4連覇を果たして以来栄冠から遠ざかっていたが、久々の選手権制覇となった。

ベルント・ラートマッヒャー4d(右)とニルス・ションベルク4dの親子が決勝ステージで対決。結果は息子のションベルク4dが勝利を収めた。しかし、ラートマッヒャー4dも2位のヴェルティケ6dに土をつけるなど好調で同率3位に入賞した。(写真:ドイツ囲碁連盟)
前回2019年優勝のトイバー6d(左)と2017-2018年連覇のヴェルティケ6dの対局。中央が優勝したクレマー6d。トイバー6dは同率3位に終わった。

フランス・アマチュア選手権、ドゥバール6dが優勝

フランス・アマチュア選手権が10月9-10日にかけて東部ナンシーで開かれた。同選手権はフランス国籍を持ったアマチュアに参加が限定されており、世界大会のフランス代表選考会でもある。様々な基準を通じて選考された16人がトーナメント方式で覇を競う。

決勝に残ったのはすでに本大会5度の優勝を誇るトマ・ドゥバール6dと最近活躍の著しい新鋭リンヴ・トゥ4d。特にトゥ4dは2回戦で2017、2019年に本大会で優勝しているバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6dを撃沈。段位が実力に追い付いていないともっぱらの評判だった。

1回戦の様子。中学生になったばかりのシアン・トゥゾ2d(左)は優勝のドゥバール6dに半目の惜敗。驚きを呼んだ。(写真:ナンシー囲碁クラブ)
ドゥバール6d(右)とトゥ4dの決勝。中央は先の世界アマにフランス代表として参加したドレアン=ゲナイジア6d。

決勝は激しいねじり合いとなり最後までもつれたが、ドゥバール6dが辛勝して6度目の優勝を飾った。

囲碁小国の覇者たち

欧州囲碁界においてあまり目立たない国で大記録を打ち立てているプレーヤー達がいる。
9月末に開かれたベルギー選手権では、リュカ・ネイランク6dが実に11度目の優勝を飾った。

また同じく9月末に開かれたスウェーデン選手権では、フレデリック・ブロンバク6dが9度目の優勝を果たした。

ネイリンク6d(右)。フランス・オープン選手権にて。(写真:Olivier Dulac)
ブロンバク6d。(写真:EurogoTV)

ネイランク、ブロンバク6dはそれぞれ欧州ランキング上位50位に入る強豪で、優勝回数が示すように共に出身国では圧倒的な力を誇っている。このように一人の天才的なプレーヤーが優勝を重ねるケースは、以前は各国に存在したケースなのだが、インターネットによって裾野が広がるにつれ競争が激化し、珍しくなっている。それだけに、この二人は貴重な存在と言えるだろう。

なお、選手権優勝回数の欧州記録は英国のマチュー・マクファディエン6dの25回。これに、フィンランドのヴェーサ・ラーティカイネン5dの19回が続く。どちらも途方もない数であると同時に、囲碁に対する飽くなき熱意を感じさせる記録でもある。ネイランク、ブロンバクの両6dがどこまで迫れるかが注目される。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年10月12日 ]

欧州ペア碁選手権、コヴァレヴァ/スリン・ペアが優勝

欧州ペア碁選手権が9月24-25日にかけてセルビアのニシュにおいて開催された。新型コロナウイルス禍で2020年は開催されず、2019年のオランダ・フローニンゲン大会以来2年ぶりの大会となった。参加ペアは15ペアで、ここ数年の大会と同水準となったが、参加国はチェコ、ドイツ、フランス、ロシア、セルビア、スロバキアの6か国のみで、常連のハンガリー、オランダ、ルーマニア、スイス、ウクライナといった国々が不在だったのは寂しい。新型コロナウイルス禍に加えて、ニシュへのアクセスが容易でないことが影響したかもしれない。

フランスのペア同士の対局。(写真:Marta Prelic、セルビア囲碁協会、以下同)
ドイツペア。

6回戦の結果、全勝者はなく、5勝1敗でナタリア・コヴァレヴァ5d/ドミトリー・スリン6dペアとアイグル・ファズルジャノヴァ3d/アレクサンダー・ディナーシュタイン3pのロシア2ペアが並んだが、直接対決を制したコヴァレヴァ/スリン・ペアが規定により優勝した。

優勝したコヴァレヴァ(左)/スリン・ペア。

コヴァレヴァ/スリン・ペアは欧州ペア碁選手権の常連。2007、2008、2009、2010、2017、2019年にも優勝経験のある、欧州最強ペアの一つである。

最終結果は以下の通り。

順位 女性/男性 勝敗
1 コヴァレヴァ/スリン ロシア 5-1
2 ファズルジャノヴァ/ディナーシュタイン ロシア 5-1
3 マルツ/オブナウス ドイツ 4-2
4 ウジエ/ドレアン=ゲナイジア フランス 4-2
5 カルスベルク/トルビツィン ロシア 3-3
6 ボクレ/ラボレ フランス 3-3
7 カオ/フネック フランス 3-3
8 ドンレ/ションベルク ドイツ 3-3

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年9月30日 ]

チェコでSo-Imba杯が開催

チェコ東部ブルノ近郊で9月の第1週末に第1回目となるSo-Imba杯が開かれた。クラス別に4カテゴリーに分かれ、30人強が参加した。トップとなるAクラスは4dから7dまで6人のリーグ戦方式で行われた。スタニスワフ・フレイラック7d(ポーランド)、ドミニク・ボヴィズ6d(ハンガリー)、オンドジェイ・クルムル6d(チェコ)の3人が4勝1敗で並び、規定によりフレイラック7dが優勝を飾った。

ボヴィズ6d(左)とクルムル6dの対局。(写真:Gergely Szalay)
ヴィクトール・リン6d(オーストリア)とヤン・シマラ6d(チェコ)の対局。(写真:Gergely Szalay)

チェコは欧州の中心にあたる位置関係をうまく活用し、対面式イベント再開後も国際的な大会を開くことに成功している。7月半ばに中部パルドゥビツェで開かれたMoyo Open大会においては、5d以上6人を含む50人近くが参加した。

7月に開かれたMoyo Openの様子。(写真:チェコ囲碁協会)

ロシア囲碁連盟、中国囲棋協会と協力合意

ロシア囲碁連盟は9月9日、オンラインでの会合を通じて中国囲棋協会と協力合意を交わした。期間は3年間で、更新可能。共同でのイベント・大会開催、選手育成プログラムなどに関して協働する。中国囲棋協会は去る4月、同様の合意を中南米各国の囲碁協会を束ねたイベロアメリカ囲碁連盟との間にも締結している。

会合の様子。(写真:ロシア囲碁連盟)

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年9月14日 ]

フランス、欧州チーム選手権3連覇

パンダネット協賛の欧州チーム選手権の決勝ステージが8月28、29日にかけてパンダネット上で開催された。決勝に進出したのはロシア、ポーランド、フランス、ウクライナの4か国。総当たりリーグ戦の結果、フランスがロシアに4-0、ポーランドに3-1、ウクライナに3-1の圧倒的な内容で3連勝し、3連覇、通算4回目の優勝を果たした。

フランスチーム。左から戴俊夫8d、チームキャプテンのアントワーヌ・フネック4d、トマ・ドゥバール7d、タンギー・ルカルヴェ1p、バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d。

決勝ステージの最終結果は以下の通り。

    フランス ロシア ウクライナ ポーランド 勝-敗-引き分け
1
フランス
- 4-0 3-1 3-1 3-0
2
ロシア
0-4 - 3-1 2-2 1-1-1
3
ウクライナ
1-3 1-3 - 4-0 1-2-0
4
ポーランド
1-3 2-2 0-4 - 0-2-1

フランスオープン選手権が対面式で開催

フランスオープン選手権が8月27-29日の3日間にかけてグルノーブルにおいて開催された。昨年もグルノーブルでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルス禍のために直前になってオンライン開催に切り替わっており、対面式では2年ぶりの開催となる。

オープン選手権は、フランス囲碁連盟(FFG)の全メンバーに開かれており、外国人、プロも参加可能。今年は、パンダネット主催の欧州チーム選手権決勝ステージが同じ週末に開かれたためフランスの主力メンバーが残念ながら抜けたものの、それでもフランス中から26人が参加した。参加にあたっては、ワクチン接種またはPCR検査陰性を証明するQRコード式「衛生パス」の提示が求められた。また、対局にあたってプレーヤーはマスクを着用した。

会場はグルノーブルの中心にある公園のそばにあり、週末には巨大碁盤を使ったイベントも開かれた。ちなみに石は白黒のフリスビーである。
最年少参加者のシアン・トゥゾ2dは鋭い読みを武器に、見事4勝を上げた。
元欧州女流選手権者のアリアーヌ・ウジエ4d(左)と、欧州青少年選手権者(16歳未満)のリンヴ・トゥ4dが最終第7ラウンドで対決。遅々とした進行で、両者秒読みの中延々と続いた。結果はトゥ4dが逆転勝ちで4位入賞を果たした。
フロラン・ラボレ5d(左)と、昨年のフランス選手権優勝者デニス・カラダバン5dのグルノーブル在住同士の対局。結果はラボレ5dが土壇場での大逆転勝ちで、2位に食い込んだ。
昨年オープン選手権優勝のリュカ・ネイランク6d(左)と筆者の対局。

7回戦の結果、筆者が全勝し、6年ぶり5度目の優勝を果たした。2位はフロラン・ラボレ5d、3位はリュカ・ネイランク6d、4位はリンヴ・トゥ4dだった。

フランスもAI流が大流行で、今回の大会でも布石はほとんどの対局が似通ってしまったのはやむを得ないところか。勿論それはよいのだが、それを消化した上で、是非囲碁の本質を捉える努力をしてほしい、と願わずにはいられない。

欧州女流選手権、ブルダコヴァ5dが優勝

欧州女流選手権が9月4-5日にかけてオンラインで開催された。当初はロンドンでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルス禍を鑑み直前にオンラインでの開催に変更された。ロシア、ウクライナ、キルギスタン、ルーマニア、クロアチア、チェコ、フィンランド、英国、オーストリア、フランス、ドイツから31人が参加した。

優勝したブルダコヴァ5d。

6回戦の結果、ロシアのディナ・ブルダコヴァ5dと新鋭ヴィルジニア・シャルネヴァ3dが共に5勝1敗で並んだが、規定の結果ブルダコヴァ5dが優勝となった。実力者として知られるブルダコヴァ5dだが、欧州女流選手権での優勝は2014年以来となる。

3位は昨年優勝のコヴァレヴァ5d、4位はこちらも新鋭のクレペティナ1dと上位4位はロシアが占め、5位には最終戦でブルダコヴァ5dに一発いれたフランスのミレナ・ボクレ2dが入賞した。

結果は以下の通り。

1 ディナ・ブルダコヴァ5d ロシア 5勝1敗
2 ヴィルジニア・シャルネヴァ3d ロシア 5勝1敗
3 ナタリア・コヴァレヴァ5d ロシア 4勝2敗
4 アナスタシア・クレペティナ1d ロシア 4勝2敗
5 ミレナ・ボクレ2d フランス 4勝2敗
6 オレシア・マルコ1d ウクライナ 3勝3敗
7 マーニャ・マルツ3d ドイツ 3勝3敗
8 アリアーヌ・ウジエ4d フランス 3勝3敗

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年9月2日 ]

ライアン・リー3p、トランスアトランティック・プロリーグに優勝

欧州囲碁連盟(EGF)プロ6人、北米囲碁連盟(NAGF)プロ2人、欧州アマ2人により争われたトランスアトランティック(大西洋両岸)・プロリーグの決勝ステージが8月半ばに開催された。

予選リーグを勝ち抜いたのはイリヤ・シクシン4p(ロシア)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、ライアン・リー3p(カナダ)、タンギー・ルカルヴェ1p(フランス)の4人。準決勝3番勝負では、シクシン4p、リー3pがそれぞれルカルヴェ1p、カチャノフスキー2pを下して決勝に進出した。

決勝生中継の様子。

決勝3番勝負はリー3pが落ち着いた打ち回しで2連勝、優勝した。リー3pは前身の欧州プロリーグ第2回大会ですでに優勝を飾っている。3位決定戦ではカチャノフスキー2pがルカルヴェ1pを2-1で下した。

今回の大会では、NAGFに所属するリー3p、カルヴィン・スン1p(米国)の戦いぶりが特に注目された。国際大会でも活躍しているリー3pはさておき、NAGFのプロはEGFのプロに比べて対局数が少ないために棋力についての情報が少ないからだ。結果はリー3pが優勝。スン1pも枠抜けを惜しいところで逃したが、予選リーグでシクシン4pとの間で接戦を繰り広げるなどその力を存分に見せつけた。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年8月10日 ]

オランダ・オープン大会、ヴェルティケ5dが優勝

オランダ・オープン大会が7月30日から8月1日にかけてオランダのデンハーグで開かれた。合計参加者数は50人と中規模だったが、中でも5d以上のプレーヤーが10人参加。新型コロナウイルス禍が始まって以来、対面式の国際大会としては最もハイレベルな大会の一つとなった。

6回戦の結果、優勝したのは2017-2018年のドイツチャンピオンであるヨナス・ヴェルティケ6d。強敵をなぎ倒し、見事全勝優勝を飾った。2位はオスカル・バスケス6d(スペイン)、3位はジハン・ヤン5d(オランダ)、4位はコルネル・ブルゾ6d(ルーマニア)、5位はルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)だった。

なお欧州ではワクチン接種が進む中で対面式のイベントが復活しつつあり、今夏はフランス、ハンガリーで合宿が開かれた。フランスの合宿は2週間にわたって開催され、合計では150人の参加者を集めた。

優勝したヴェルティケ6d(写真:Adriana Tomsu、2019年ストラスブールにおけるプロ入段手合にて)
フランスの囲碁合宿にて。犬も多面打ちに参加?(写真:Camille Lévêque / Loïc Lefebvre)

プロ入段手合、今秋に開催へ

欧州囲碁連盟(EGF)は、同連盟8人目となるプロを選ぶ入段手合を今秋に開催する。10月25-31日にかけて、オランダのデンハーグおよびベルギーのブリュッセルにおいて行われる。前回は2019年に仏ストラスブールで開かれ、地元フランスのタンギー・ルカルヴェ選手が入段を果たした。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年7月10日 ]

欧州チーム選手権、決勝ステージ進出国が決定

パンダネット協賛の欧州チーム選手権の決勝ステージ進出国がロシア、ポーランド、フランス、ウクライナの4か国に決定した。10月-5月にかけてのリーグ戦を勝ち抜いた。
注目は、2017-2018年シーズン以来の決勝ステージ進出を果たしたポーランド。マテウシュ・スルマ2p、スタニスワフ・フレイラック7dの強力ツートップの力でトップ3以内への食い込みを目指す。

決勝ステージ開催日時は現在のところ未定。昨年は8月末にオンラインで開催され、フランスが二連覇を果たしている。

同大会における過去の決勝ステージ進出国ならびに順位は以下の通り。

開催年度 2010-2011 2011-2012 2012-2013 2013-2014 2014-2015 2015-2016 2016-2017 2017-2018 2018-2019 2019-2020
優勝
ロシア
ロシア
チェコ
ロシア
フランス
ウクライナ
ロシア
ロシア
フランス
フランス
2位
ルーマニア
チェコ
ロシア
チェコ
ウクライナ
ロシア
ルーマニア
フランス
ロシア
ロシア
3位
ウクライナ
ウクライナ
ウクライナ
フランス
チェコ
フランス
ハンガリー
ウクライナ
ウクライナ
チェコ
4位
ハンガリー
フランス
ハンガリー
ウクライナ
ルーマニア
ルーマニア
ウクライナ
ポーランド
ルーマニア
ウクライナ

なお、同大会はA-Dの4リーグに分かれており、囲碁振興の目的でアフリカの南アフリカ、モロッコや、中央アジアのカザフスタンといった国も受け入れている。

対面式のイベントが再開

ワクチン接種が進み、新型コロナウイルスの新規感染者が全体的に減少する中、対面式の大会が欧州各地で再開されつつある。また、ウクライナでの囲碁コングレスこそ中止されたが、7-8月にはフランス、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアなど各地で囲碁キャンプも予定されている。ただし、デルタ変異株による感染拡大が進んでいる国もあり、見通しは相変わらず不透明なままだ。

フランスのシャンベリーで開催された地方選手権の様子。「一年以上オンラインでばかり囲碁を打ってきたので水平な碁盤が奇妙に見える」との声も聞かれた。(写真:筆者)
会場に貼られた衛生に関する注意書き。(写真:筆者、イラスト:Camille Lévêque)

欧州選手、世界アマ選手権で活躍

第41回目となる世界囲碁アマチュア選手権が6月3-9日にかけてロシアのウラジオストクにおいて開催された。ロシア開催はこれが初めてとなる。世界アマは昨年、新型コロナウイルス禍にともなって中止されており、2年ぶりの開催となる。

今回は、特別な状況であることもあり、実際にウラジオストクに来たプレーヤーとオンライン参加のプレーヤーを混ぜたハイブリッド式での開催となった。全体では57人が参加。現地には、欧州のプレーヤーを中心に約25人が馳せ参じた。ウラジオストクでは、過去数年国際的な経済会議である「東方経済フォーラム」の機会に囲碁大会・囲碁関連イベントが開かれている。今回も世界アマに加えて囲碁フェスティバルが開かれ、様々な催しが開催された。また国際宇宙ステーション(ISS)のロシア人クルーがメッセージを送るなど、豪華な大会となった。

6回戦の結果は以下の通り。

順位 名前 勝敗
1 馬天放 中国 5-1
2 詹宜典 中華台北 5-1
3 キム・ダビン 韓国 5-1
4 ルカシュ・ポドペラ チェコ 5-1
5 スタニスワフ・フレイラック ポーランド 4-2
6 陳乃申 香港 4-2
7 バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア フランス 4-2
8 ウィチリッチ・カルエハワニット タイ 4-2
9 ファム・ドゥク・アン ベトナム 4-2
10 ヴィアチェスラフ・カイミン ロシア 4-2

欧州の最高は4位のルカシュ・ポドペラ7dだったが、それ以上に話題を呼んだのは5位のスタニスワフ・フレイラック7dである。フレイラック7dは3回戦で日本代表の森川舜弐さんを倒し、更に続く4回戦で中国代表の馬天放7dを撃沈。最終日に詹宜典7d(中華台北)、ポドペラ7dに連敗して5位に終わったが、最終局ポドペラ7dに勝っていれば、欧州選手としては過去最高の2位に入賞するところだった。また、7位に入賞したフランスのドレアン=ゲナイジア6dも日本代表に辛勝するなど、結果以上に欧州にとっては豊作な大会だった。

最終局、フレイラック7d(左)対ポドペラ7dの対局。「欧州大会で何度も当たった相手で、これまで勝ち越しているので自信もあった」とポドペラ7d。(写真:欧州囲碁連盟)
イリヤ・シクシン4p(中央)を中心に検討する欧州のプレーヤー達。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年5月20日 ]

欧州プロリーグが「大西洋両岸プロリーグ」に拡大:北米プロ2人も参戦

欧州囲碁連盟(EGF)のプロが参加し、これまで3回にわたりオンライン開催されてきた「欧州プロリーグ」が、「大西洋両岸(トランスアトランティック)プロリーグ」へと拡大される。具体的には、EGFプロに加え、北米囲碁連盟(NAGF)のプロ2人、欧州のアマ2人が参戦する。

EGFからは、イリヤ・シクシン4p(ロシア)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、アリ・ジャバリン2p(イスラエル)、アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)、タンギー・ルカルヴェ1p(フランス)の6人が参加。NAGFからは、すでに第2回大会に参戦し優勝したライアン・リー3p、カルヴィン・スン1pが参加する。

またアマチュア予選は5月頭に開催され、フランスのレミ・カンパニー6dとスペインのオスカル・ヴァスケス6dが勝ち抜いた。

10人は2つのリーグに分かれて対局。リーグトップ同士が決勝を争う。リーグ戦はすでに始まっており、決勝は7月に開かれる予定。優勝賞金は1000ユーロ。

AGAプロのライアン・リー3p(左)とカルヴィン・スン1p。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年4月20日 ]

『欧州囲碁ジャーナル』が創刊

ウクライナのアルテム・カチャノフスキー2pが音頭を取って、囲碁雑誌『欧州囲碁ジャーナル』が3月頭に創刊された(創刊号はこちらから無料でダウンロードできる:https://www.eurogofed.org/newsp/2020/European%20Go%20Journal/journal-february2021.pdf)。月刊で、PC上で読めるPDF版および紙版を発行する。内容は欧州およびアジアでの囲碁ニュースに加え、打碁の解説、インタビュー、AIによる最新分析などを含み、全50ページ超。価格は、PDF版が5ユーロ、紙版が送料込みで15ユーロ。

カチャノフスキー2pは数年前から囲碁雑誌を作るアイデアを温めていたという。ビデオやストリーミングなどデジタルコンテンツなどが増加し、囲碁の勉強にあたっての中心となりつつあるが、「読むこととビデオを見ることでは、情報の捉え方が異なる。読書にも必ず需要があるはずだ」と語る。

なお、カチャノフスキー2pは今年に延期されたウクライナにおける欧州囲碁コングレスの組織でも中心的な役割を果たしている。新型コロナウイルス禍が収束の気配を見せぬ中、対面式の開催には相変わらず不透明性がつきまとうが、これについては4月末までに決定が下される見通し。

創刊号の表紙。

パリ大会、オンラインで開催

イースター連休恒例のパリ囲碁大会が4月3-5日にかけてオンラインで開催された。昨年は大会そのものがキャンセルとなっており、2年ぶりの開催。欧州外からも参加者を呼び、全体では175人が参加する大きな大会となった。オンライン大会組織のノウハウがこの一年、欧州全体で蓄積された一つの証だろう。ただし、欧州のトッププレーヤー達はアルテム・カチャノフスキー2p、アントン・シェルニフ6d(ロシア)を除いて不在。対局姿のビデオ撮影を義務化するなどの措置が採られているものの、不正が発生するのではないかとの不信感も根強いことを示す結果となった。

大会は6回戦の末、韓国出身でベルリン在住の金成進8dが全勝優勝を果たした。2位は香港のカンノ・ヒロキ5d、3位はカチャノフスキー2pだった。

ウクライナでの欧州囲碁コングレス、中止に

ウクライナで今夏の開催が予定されていた欧州囲碁コングレスが中止となった。新型コロナウイルス禍が理由。昨年に続く中止となる。コングレスはウクライナ南西部カームヤネツィ・ポジーリシクィイにおいて7月末から8月頭まで2週間の開催が予定されていた。また第二週目には欧州青少年選手権の対面式での開催も予定されていたが、こちらも中止となる。

なお、ウクライナは2023年に再びコングレスを開催することとなった。来年はルーマニアのヴァトラ・ドルネイにおける開催が予定されている。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年2月25日 ]

第3回欧州プロ・オンライン選手権、シクシン3pが優勝

第3回となる欧州プロ・オンライン選手権が12月頭から2月上旬にかけて開催された。今回の参加者はイリヤ・シクシン3p(ロシア)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、アリ・ジャバリン2p(イスラエル)、アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)、タンギー・ルカルヴェ1p(フランス)の6人。

本大会では予選リーグ(すべての対戦は3番勝負で行われる)で上位3人が決勝ステージに進出。2、3位が準決勝3番勝負を行い、その勝者が1位と決勝5番勝負を打つ、というシステムである。欧州の選手権では、このように複数局を通じて勝敗を決めることが多くなってきた。

優勝のシクシン4p。

予選のリーグ戦ではシクシン3pが圧倒的な強さを見せ、土付かずのリーグ戦5戦全勝(総合成績も10勝0敗)で1位通過。2位はリーグ戦3勝2敗でカチャノフスキー2p、リジー2p、ルカルヴェ1pの3人が並んだが、規定によりリジー2p、ルカルヴェ1pが準決勝3番勝負を打ち、これはリジー2pが2勝1敗で勝利。決勝はシクシン3pとリジー2pによる対局となった。

決勝5番勝負では、リジー2pも第3局で一発を入れたものの、シクシン3pが3勝1敗で優勝。先日のグランプリファイナルに続く勝利を上げた。なお、シクシン3pは今回の優勝により4pへと昇段した。

第7回青少年チーム選手権、ロシアが優勝

第7回となるチーム対抗の青少年チーム選手権が11月から2月にかけて実施された。本大会は国別対抗戦だが、青少年の人数が少ない国は他の国と連合チームを組むことができる。参加チームは、ベラルーシ、クロアチア、チェコ、フランス、ドイツ、ハンガリーオランダ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、セルビア、トルコ、英国、ウクライナの各チームに加え、スイス、オーストリア、ギリシャ、イタリアのプレーヤーが形成する「Chagi」チーム、そしてスロバキア、デンマークのプレーヤーが形成する「Slovadan」チームの全16チーム。

大会は4回戦で争われ、結果層の厚いロシアが4連勝で優勝を果たした。2回戦のウクライナ戦を3-2で制したのが大きかった。2位には英国、3位にはルーマニアが入賞した。なお本大会では第1回からロシアが5連覇を果たしており、昨年はドイツが初優勝していた。

第3回コロナカップ開催へ

第3回となるコロナカップが3月頭から4月末にかけてオンラインで開催される。本大会は、新型コロナウイルス禍に伴う外出制限下でも国際的な大会が楽しめるように、とチェコのルカシュ・ポドペラ7dが音頭を取って開いているもので、参加者は第1回が360人、第2回は400人と大変な成功を収めている。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2021年2月10日 ]

欧州グランプリファイナル、シクシン3pが優勝

第4回となる欧州グランプリファイナルが1月8-31日にかけてオンラインで開催された。参加者16人は、欧州国籍保有者に限られ、2020年に開かれ「ボーナスポイント大会」に指定された大会の結果を元に選考された。新型コロナウイルス禍が祟り、「ボーナスポイント大会」の数はわずか6と、前年の15から大幅に減少した。

まず、8-20日にかけて開かれた予選リーグでは、イリヤ・シクシン3p(ロシア)、スタニスワフ・フレイラック7d(ポーランド)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、オスカル・バスケス6d(スペイン)、アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)、アリ・ジャバリン2p(イスラエル)の8人が決勝ステージに進出した。

決勝ステージはすべて3番勝負で争われた(カッコ内は勝敗)。

準々決勝 準決勝 決勝  
シクシン シクシン(2-1) シクシン(2-1) シクシン(2-0)
ジャバリン
ポドペラ リジー(2-1)
リジー
フレイラック フレイラック(2-1) カチャノフスキー(2-1)
クラヴェッツ
バスケス カチャノフスキー(2-0)
カチャノフスキー

結果は、シクシン3pが決勝でカチャノフスキー2pを2-0で下し、2年ぶりの優勝を果たした。3位はリジー2p、4位はフレイラック7dだった。

なお新型コロナウイルス禍を背景に、対面式の大会は2021年に入って行われておらず、今春に予定される大会も非常に少ない。

[ 記事:野口基樹 ]

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