ヨーロッパ囲碁ニュース
ヨーロッパの囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
囲碁ニュース [ 2022年12月18日 ]
グランドスラム、ヴェルティケ6dが優勝
12月1-4日にかけて、セルビア・ニシュにおいてグランドスラム大会が開催された。同大会の優勝賞金は欧州最高の1万ユーロ。欧州囲碁連盟(EGF)プロを含め、欧州トップの16人が集まり、ノックアウト方式で優勝を争った。
参加者は以下の通り。
アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)
パヴォル・リジー2p(スロバキア)
アリ・ジャバリン2p(イスラエル)
マテウシュ・スルマ2p(ポーランド)
アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)
タンギー・ルカルヴェ1p(フランス)
スタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)
バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7d(フランス)
ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)
ニコラ・ミティッチ7d(セルビア)
デュシャン・ミティッチ7d(セルビア)
フレデリック・ブロンバク6d(スウェーデン)
コルネル・ブルゾ6d(ルーマニア)
ヨナス・ヴェルティケ6d(ドイツ)
ドミニク・ボヴィズ6d(ハンガリー)
エリアン=ヨアン・グリゴリウ6d(ルーマニア)
ロシアによるウクライナ侵攻の関係で、絶対王者のイリヤ・シクシン4pなどロシア勢は欧州選手権に続き不在となった。ベスト4に進んだのは、リジー、カチャノフスキーのEGFプロ組と、ブロンバク、ヴェルティケのアマ組。プロではリジー2p、アマではヴェルティケ6dが勝ち上がって決勝を争った。
決勝は、白番マネ碁を得意とする現ドイツチャンピオンのヴェルティケ6dを意識して、リジー2pが黒番で天元を占めて始まった。ヴェルティケ6dは安定した読みで黒の焦りを咎め、6目半勝ちを収めた。
スルマ | スルマ | ブロンバク | リジー | ヴェルティケ |
ボヴィズ | ||||
ブロンバク | ブロンバク | |||
ポドペラ | ||||
クラヴェッツ | クラヴェッツ | リジー | ||
ドレアン=ゲナイジア | ||||
グリゴリウ | リジー | |||
リジー | ||||
カチャノフスキー | カチャノフスキー | カチャノフスキー | ヴェルティケ | |
ブルゾ | ||||
Nミティッチ | ルカルヴェ | |||
ルカルヴェ | ||||
ジャバリン | ミティッチ | ヴェルティケ | ||
Dミティッチ | ||||
ヴェルティケ | ヴェルティケ | |||
フレイラック |
今夏の欧州選手権ではバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7dが新王者となったが、シクシン4pの不在があるとはいえ、全体の底上げが進み、プロとアマの差が縮小していることが伺われる結果となった。
サイドトーナメントではドレアン=ゲナイジア7dが優勝。グランドスラムでは1回戦負けだったが(「全て勝つわけにはいきません」とのこと)、今年は欧州選手権で優勝の後、欧州ペア碁選手権でアリアーヌ・ウジエ4dと組んで優勝。チーム主将としてマルセイユを仏クラブ選手権を優勝に導き、国際アマチュア・ペア碁選手権大会でも再びウジエ4dと組んで4位入賞と豊作な年となった。
ポーランド選手権
11月10-13日にかけて、ポーランド選手権が中西部ポズナニにおいて開かれた。前年選手権の上位入賞者4人と、予選勝ち上がり者4人による8人により決勝ラウンドが争われた。
総当たり戦の結果、スタニスワフ・フレイラック1pが全勝優勝を果たした。2019年の選手権以来、4年連続土つかずと、圧倒的な強さである。
2023年欧州囲碁コングレス、独ライプツィヒでの開催が正式決定
2023年の欧州囲碁コングレスの開催地として、ドイツ東部ライプツィヒが正式に決定し、サイト(https://www.egc2023.de/registration/)も立ち上げられた。7月22日-8月5日にかけて、ライプツィヒ南郊マルククレーベルクにある高校にて実施される。2023年は本来、ウクライナでの開催が予定されていたが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて急遽変更された。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年10月24日 ]
欧州ペア碁選手権、仏ウジエ/ドレアン=ゲナイジア ペアが優勝
欧州ペア碁選手権が10月8-9日にフランス・ストラスブールで開催された。昨年は新型コロナ禍で移動が制限される中、規制の少ないセルビアでの開催で15ペアを集めたが、今年は規制もほぼなくなり、参加ペア数も、毎年上位を占めるロシアが不参加であるにも関わらず、20ペアを超えて賑やかな大会となった。
6回戦の結果、フランスのアリアーヌ・ウジエ3d/バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7dのペアが全勝優勝を果たした。ドレアン=ゲナイジア7dは今年の欧州選手権者、ウジエ3dは過去に欧州女子選手権で優勝経験のある強豪である。今年12月の国際アマチュア・ペア碁選手権に招待される。
結果は以下の通り。
順位 | 名前 | 国 | 勝敗 |
---|---|---|---|
1 | アリアーヌ・ウジエ/バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア | フランス | 6-0 |
2 | ツァオ・ペイ/ルカス・クレマー | ドイツ | 5-1 |
3 | クリスティーナ・クルプシュ/クリストファー・カクウィン | ドイツ | 4-2 |
4 | マーニャ・マルツ/ダヴィッド・ウルブリヒト | ドイツ | 4-2 |
5 | ローヴァ・ヴォーリン/アントン・シルヴェル | スウェーデン | 4-2 |
6 | ニョシ・カオ/アントワーヌ・フネック | フランス | 4-2 |
7 | マリー=クレール・シェーヌ/ファビアン・リップス | フランス | 4-2 |
独選手権、ヴェルティケ6dが優勝
ドイツ選手権最終ステージが9月30日から10月3日にかけてフランクフルトにおいて開かれた。10月3日の「ドイツ統一の日」の休日を利用した日程で、8人による4日間にわたる総当たり戦である。
昨年の決勝ステージでは、優勝のルカス・クレマー6d、準優勝のヨナス・ヴェルティケ6dが共に5勝2敗という大混戦の展開となった。今年は、6回戦までクレマー6dが全勝街道を突っ走ったが、連覇を目の前にして最終戦でヴェルティケ6dに敗戦。この二人が6勝1敗で昨年に続き並んだが、今年はヴェルティケ6dの優勝となった。
孔子杯、ダブリンで開催
9月最終終末に、アイルランド・ダブリンにおいて孔子杯が開かれた。欧州には中国の孔子学院をスポンサーとした大会が幾つかあり、これもその一つ。2012年から開かれているアイルランドの主要トーナメントの一つである。アイルランド碁界そのものはあまり大きくないが、同大会は欧州囲碁連盟のCランクに分類され(この分類を得るためにはある程度の賞金レベルを確保することなどが条件となる)、欧州の強豪が多く参加する大会でもある。ほかの大会同様新型コロナ禍の影響を受けたが、3年ぶりに開催にこぎつけ、40人弱が参加した。
5回戦の結果、ポーランドのスタニスワフ・フレイラック1pが全勝優勝を飾った。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年10月3日 ]
欧州学生選手権、独ルツィカ4dが優勝
欧州学生選手権が9月17-18日にかけての週末にドイツ西部のトリーアにある孔子学院において開かれた。同大会は、新型コロナウイルス禍に伴い2020、2021年と中止されていた。前回は2019年、ウクライナのキエフで開かれ、ウクライナ、ロシアをはじめとして23人が参加している。激変の世の中、隔世の感を禁じ得ない。
今回の大会には、地元ドイツのプレーヤーを中心に11人が参加した。参加を予定していたが、空港のストライキのせいで来られなかった選手もいたのは残念だった。
5回戦の結果、ドイツのマルティン・ルツィカ4dが全勝で初優勝を果たした。4回戦では、格上のエリアン=ヨアン・グリゴリウ6d(ルーマニア)に対し苦しい碁を大逆転する殊勲の星を挙げた。
なお、優勝のルツィカ4d、準優勝のグリゴリウ6d、3位のミルタ・メダック2d、女性2位のイザベル・ドンレ2d(ドイツ)は12月に開かれる世界学生ペア碁選手権に出場する。
欧州女流選手権、ポチャイ4dが優勝
欧州学生選手権に続き、9月24-25日の週末に、ハンガリー・ブダペストにおいて欧州女流選手権が開かれた。こちらは40人が参加した。ブダペストへの交通の便がよいこともあるが、ここ数年盛況な合宿などを開いているハンガリー囲碁界の賑やかさを示す数字でもあるだろう。女流選手権は2020、2021年とオンライン開催で、対面式での開催は3年ぶりとなる。
例年圧倒的な力を見せるロシア選手が不在である中、4勝1敗で3人が並ぶ大混戦となったが、規定により地元のリタ・ポチャイ4dが優勝した。2位はアリアーヌ・ウジエ4d(フランス)、3位はポチャイ4dを最終戦で破ったマーニャ・マルツ3d(ドイツ)だった。ポチャイ4dの優勝は2005、2009、2011、2015年以来5度目となる。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年9月11日 ]
フランス・オープン選手権、戴8dが4度目の優勝
8月最終終末にフランス・オープン選手権がパリにおいて開催された。フランス囲碁連盟加入者が参加できる同選手権は毎年場所を変えて開催されるが、首都パリでの開催はかなり久しぶりとなる。また今回、参加者枠が拡大されたこともあって、総参加者数は約50人と、毎年の30人前後から大きく増加した。
注目は、フランスチームの主将として活躍する戴俊夫8dと、先日欧州選手権で優勝を果たしたバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7dの対決。結果は戴8dが貫録勝ちし、オープン選手権において4度目となる優勝を果たした。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年8月16日 ]
第64回欧州囲碁コングレス レポート
今年の欧州囲碁コングレス(https://egc2022.ro/)は、ルーマニアの北東部に位置する自然豊かな小さな町、ヴァトラ・ドルネイで開催されました。
7月24日から8月6日までの2週間、約300人の参加者が集まり、囲碁のイベントやスポーツが行われました。その中でも、欧州選手権、オープン欧州選手権、ウィークエンドトーナメント、早碁トーナメントがメインイベントとして行われました。
例年通り、欧州囲碁コングレスが始まる直前の7月22日・23日に、パンダネット・欧州チーム選手権の決勝が、ヴァトラ・ドルネイで開催されました。審判を務めたトニー・クラーセン四段の報告です。
「今年はカメラを使って4局を遠隔で中継し、記録することに成功しました。
またフライトのキャンセルにより、ポーランドの選手が来られず、オンラインで対局することとなりました。
第1回戦は、次の2回戦への熱戦が期待できるような素晴らしい結果となりました。
ディフェンディングチャンピオンのフランスはチェコと2-2で引き分け、ウクライナはポーランドを3-1で破りました。
第2回戦はフランス、ウクライナとも4-0で勝利となり、最後の3回戦の結果次第でフランスかウクライナの優勝が決まることになりました。
決勝戦の結果はフランスとウクライナが2-2の引き分けとなったため、トータル勝敗により、2022年の欧州チームチャンピオンはウクライナとなりました。
表彰式後、ウクライナの全選手がチームに合流でき、寄付金のおかげで、多くのウクライナの子供たちがヨーロッパ各地からヴァトラ・ドルネイでの、2週間の囲碁大会に参加することができました。」
欧州囲碁コングレス第1週目の見所である欧州選手権の会場は、Mountain Economy Centerの略であるCE-MONTという2015年に設立された近代的建物で行われました。
建築面積3,500平方メートル、12の学習・研究ラボを備えたこのセンターは、東欧州で唯一の山岳経済センターであり、欧州では4番目のセンターとなります。西欧州ではポルトガル、フランス、イタリアの3センターがあるそうです。
欧州選手権は32人のトップ選手によって行われました。ダブルノックアウト方式で、2局負ければ敗退ですが、大会2週目に行われたオープン選手権には続けて出場することができます。
選手、組み合わせ、結果などの詳細は、こちらのリンクからご覧いただけます: https://www.eurogofed.org/egc/2022.html
決勝戦は、ウクライナのアルテム・カチャノフスキープロ二段とフランスのバンジャマン・ドレアン ゲナイジア六段で行われました。対局は始終張り詰めた雰囲気でしたが、最終的にバンジャマンの勝利となりました。彼にとって初の欧州チャンピオンタイトルと、七段(欧州囲碁連合)への昇格を達成することができました。
今年の棋譜記録の方法は、記録係が碁盤の前に直接座るのではなく、Discordを介して記録がスタジオに送信され、2人の記録係が一回戦につき4局分の棋譜を書き込むという形で行われました。
ウクライナが優勝したパンダネット欧州チーム選手権もDiscordを通し4局のライブ中継が行われ、パンダネット(GoPanda2)でも自由に見ることができました。
大会2週目も囲碁イベントが目白押しでしたが、会場近くにはサッカー、テニス、バスケットボールのコートもあり、各大会やイベントの合間に選手は屋外スポーツを楽しんでいました。
新型コロナウイルスにより2年の中止を経て、こうして対面対局による大会に参加できるのは嬉しいものです。2023年の欧州囲碁コングレスはドイツで開催予定であり、またたくさんの選手に会えることを願っています。
[ 記事:コーネル・ブルゾ ]
囲碁ニュース [ 2022年8月7日 ]
欧州選手権、伏兵ドレアン=ゲナイジア7dが優勝
欧州囲碁コングレスがルーマニア北部のヴァトラ・ドルネイにおいて7月22日-8月7日にかけて開催された。40か国から400人弱が参加した。新型コロナウイルス禍の余波に加え、ロシアによるウクライナ侵攻などもあり、例年に比べて参加者数が大きく減少したのはやむを得ないところである。
欧州選手権においては、イリヤ・シクシン4p(ロシア)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、マテウシュ・スルマ2p(ポーランド)の欧州プロ3人が欠場したことも少なからず影響したか、久々にアマチュア勢が大活躍。準々決勝ではアリ・ジャバリン2p(イスラエル)、アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)、スタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)の3人が敗れ、ベスト4に残ったプロはアルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)となってしまった。決勝はカチャノフスキー2pと伏兵のバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7d(フランス)の対局となった。カチャノフスキー2pがやや優勢かと見られたが、ドレアン=ゲナイジア7dが粘り強く打ち進め、ヨセで差し切って3目半勝ち、初優勝を収めた。3位にはスウェーデンの強豪フレデリック・ブロンバク6d、4位にはセルビアのニコラ・ミティッチ7dが入賞した。なお、アマチュアによる優勝は2012年独バード・ゴーデスベルク大会のヤン・シマラ6d(チェコ)以来である。
ベスト8進出者 | 準々決勝 | 準決勝 | 決勝 |
---|---|---|---|
アルテム・カチャノフスキー2p | カチャノフスキー | カチャノフスキー | ドレアン=ゲナイジア |
オスカル・バスケス6d | |||
スタニスワフ・フレイラック1p | ミティッチ | ||
ニコラ・ミティッチ7d | |||
アリ・ジャバリン2p | ドレアン=ゲナイジア | ドレアン=ゲナイジア | |
バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7d | |||
フレデリック・ブロンバク6d | ブロンバク | ||
アンドリー・クラヴェッツ1p |
ドレアン=ゲナイジア7dは欧州プロのタンギー・ルカルヴェ1pやトマ・ドゥバール7dと同じ世代、いわばフランスの黄金世代に属し、パンダネット主催の欧州チーム選手権においても主力メンバーとなっている。昨年の世界アマでは7位に入賞している。
なお、2023年のコングレスは独東部ライプツィヒにおいて開かれる予定。2024年のコングレスは仏南西部トゥルーズ(https://egc2024.org/en/index.html)での開催がすでに決まっている。
ライアン・リー3p、トランスアトランティック・プロリーグ連覇
欧州プロ7人と北米のプロ1人、アマ2人が参加して開かれたトランスアトランティック・プロリーグが今年4月-7月にかけてオンラインで実施された。欧州からはアリ・ジャバリン2p(イスラエル)、アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)、タンギー・ルカルヴェ1p(フランス)、イリヤ・シクシン4p(ロシア)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、スタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)、北米からはライアン・リー3p(カナダ)、ブレイディ・ツァン7d(カナダ)、ケヴィン・ヤン7d(米国)が参加した。
2リーグに分かれた予選ステージでは、リー3p、ヤン7dの北米勢が圧倒的な成績で1位につけた。この二人は準決勝においてもそれぞれシクシン4p、カチャノフスキー2pを破って決勝進出。決勝5番勝負では、リー3pが先輩の貫録を見せ、3勝0敗で優勝した。なお、15歳のヤン7dはその後開かれた北米プロ入段手合でプロ入りを果たしている。
キルギスにおいて囲碁大会が開催
キルギスのイシク湖岸において6月10-12日、同国初となる囲碁大会、フェスティバルが開かれた。地元からの参加者、隣国カザフスタン、ロシアからの参加者を含め100人超が参加した。
キルギス初の囲碁クラブとなる「センゴククラブ」は2020年に設立され、以来国内で積極的な囲碁普及活動を進めているという。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年7月24日 ]
パンダネット主催欧州チーム選手権、ウクライナが優勝
欧州囲碁コングレスが7月23日にルーマニア北部のヴァトラドルネイで開幕した。2019年以来の対面式でのコングレスとなる。これに先立ち、パンダネット主催の第12回欧州チーム選手権決勝ステージが開かれた。3連覇中のフランスに加え、第1回から12回連続の決勝ステージ進出となるウクライナ、そしてチェコ、ポーランドがリーグ戦を争った。
結果は、アルテム・カチャノフスキー2p、アンドリー・クラヴェッツ1pの欧州プロ2人に加え、ボフダン・ジュラコフスキー6d、ドミトロ・ボハツキー6dの実力者を揃えたウクライナが、ポーランドに3-1、チェコに4-0と2連勝した後、最終戦でフランスと引き分け、2勝1分けで、2015-2016年シーズン以来2度目の優勝を飾った。
チェコ、新チャンピオン誕生
チェコでは、7月に入り重要大会2大会が開催された。
まず、7月頭にはチェコ選手権決勝ステージが開かれた。1kから6dまで8人が参加した。リーグ戦7回戦の結果、昨年それぞれ1、2位だったルカシュ・ポドペラ7d、オンドジェイ・クルムル6dに加え、ヤン・クロコップ6dが1敗で並んだ。早碁によるプレーオフを行い、結果クルムル6dが勝ち抜き、昨年の雪辱を果たして初のチャンピオンとなった。
また、7月16日の週末には、中部パルドゥビツェにおいて「Moyo Open大会」が開かれた。成績優秀者にボーナスポイントが与えられる大会で、44人が参加、うち7人が6d以上、うち2人は欧州プロというハイレベルの大会となった。
5回戦の結果、地元チェコのルカシュ・ポドペラ7d、ウクライナのアンドリー・クラヴェッツ1p、スロバキアのパヴォル・リジー2pが1敗で並ぶ混戦となったが、規定によりポドペラ7dが優勝した。
なお、この大会は先日50歳の若さで亡くなった元チェコチャンピオンのラデック・ネカニッキー5dに捧げられた。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年5月30日 ]
パンダネット主催 欧州チーム選手権:決勝ステージ進出国が決定
第12回となるパンダネット主催の欧州チーム選手権の予選リーグが終了、決勝ステージ進出4か国が決定した。3連覇中のフランスが7勝1分の圧倒的成績で1位通過。加えてウクライナ、チェコ(共に5勝1分け2敗)、ポーランド(4勝1分3敗)がタイトルを争うことになる。決勝ステージは、今年夏にルーマニアで開かれる予定の欧州囲碁コングレスの機会に開催される。予選リーグは昨年10月から今月にかけて、ほぼ毎月1局のペースで進められていた。
なお、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアはトップのAリーグから排除された。
大規模大会、徐々に復帰
ワクチン接種が一段落し、移動の制限がほぼ撤廃されたことで、数はまだまだ少ないものの、参加者100人を超える大規模大会が復活し始めている。
フランスではイースターの週末である4月16-18日にパリ大会がパリ中心部で開催された。入場制限などはあったものの、142人が参加した。
優勝は戴俊夫8d(フランス)。今年は新たに本も出版するなど、幅広く活躍している。2位はコルネル・ブルゾ6d(ルーマニア)、3位はヴァレリー・クルシェルニツキー6d(ウクライナ)、4位はス・ヤン6d(フィンランド)、5位はバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d(フランス)だった。
またパリ大会に続く週末には、チェコのプラハにおいて韓国大使杯が開かれ、こちらは168人を集めた。優勝は韓国のキム・ドヒョプ7d。これにスタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)、ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)が続いた。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年3月27日 ]
ロシアによるウクライナ侵攻、欧州囲碁界も動揺
EGFによる制裁
2月末にロシアがウクライナを侵攻したことで、欧州囲碁界にも動揺が広がっている。国外に逃れた、碁を打つ子供達、女性も少なくない。ウクライナ出身でキエフ在住だったアルテム・カチャノフスキー2pは西部リヴィウに移動した。カチャノフスキー2pは囲碁雑誌『欧州囲碁ジャーナル』を主宰しているが、ロシア選手からの同誌への寄稿を受け付けないこととしたと発表、「苦渋の選択」と述べた。
欧州囲碁連盟(EGF)は3月頭、「ウクライナに対する戦争」を非難すると共に、以下のような措置を発表した。
▽ロシアのEGFメンバーシップを停止する。
▽ロシアにおいて計画されているあらゆるEGF関連イベントを中止する。
▽ロシア選手は、ロシア代表としてはEGFのイベントに参加できない(イベントにおけるロシア旗の誇示、国家斉唱などが禁止される)。ただし、中立旗の元での参加(すなわち、欧州代表としての参加)は認める。
同様の措置は、ベラルーシにも適用される。これらの措置は直ちに実施され、措置の変更がない限り維持される。これに続き、国際囲碁連盟(IGF)もEGFと同じ措置の発動を発表した。ロシア選手の排除を求める声も少なからずあったが、最終的には中立旗という条件で参加そのものは認める、というオリンピック方式の結論に落ち着いたことになる。
チェコにおける欧州青少年選手権
EGFによる発表の数日後に行われたのが、チェコ・プラハにおける欧州青少年選手権である。ここでも当然ながら、ロシア選手の参加を許可すべきかどうかが問題となった。ホスト国であるチェコ囲碁協会は、侵攻開始直後の2月26日の時点で、ロシアおよびベラルーシの選手を、青少年選手権に受け入れない(実際に用いられた言葉は「歓迎しない」)、との方針を表明した。
この問題は、EGFの臨時総会で話し合われた。ロシア側は当初、選手達の参加を主張したが、最終的に「困難な国際的状況、またロシア選手に対する容認しがたい態度を背景に、係争を避け、参加する子供達を倫理的・精神的なトラウマから保護する」ことを優先して参加を拒否すると発表。こうして青少年選手権は、毎年多くの選手を派遣するロシア抜きでの開催となった。
とはいえ、合計の参加者は110人を超え、大きな大会となった。ウクライナからは、15人が参加した。
大会の様子。サイドイベントとしてペア碁の大会も開かれた。ウクライナを支持するメッセージを掲げる選手達も見られた。(写真:Jaromír Šír、チェコ囲碁協会)
結果は以下の通り。
12歳未満(参加者32人)
名前 | 段位 | 国 | 勝敗 | |
---|---|---|---|---|
1 | ベンデ・バルサ | 3k | ハンガリー | 5-0 |
2 | アルペル・スラク | 1d | トルコ | 4-1 |
3 | アレクサンドル=ニコラス・パトラスク | 9k | ルーマニア | 3-2 |
4 | バルトロメイ・ダッフ | 6k | チェコ | 3-2 |
5 | ヤコブ・シチッチ | 11k | クロアチア | 3-2 |
6 | マテイ・シンカリ | 12k | ルーマニア | 3-2 |
ハンガリーの新鋭バルサ3kが初優勝を果たした。囲碁新興国トルコのスラク1d(昨年8位)の活躍も特筆すべきだろう。
16歳未満(参加者43人)
名前 | 段位 | 国 | 勝敗 | |
---|---|---|---|---|
1 | フセヴォロド・オフシェンコ | 4d | ウクライナ | 5-0 |
2 | ユツェ・シン | 2d | ドイツ | 4-1 |
3 | アンナ・メルニク | 1d | ウクライナ | 3-2 |
4 | ロベルト=アンドレイ・グロス | 1k | ルーマニア | 3-2 |
5 | オレシア・マルコ | 2d | ウクライナ | 3-2 |
6 | シュテファン=アドリアン・ロタリツァ | 1d | ルーマニア | 3-2 |
ウクライナのオフシェンコ4d、メルニク1dが1位、3位を占めた。オフシェンコ4dは12歳未満でも優勝経験があるホープ。
20歳未満(参加者40人)
名前 | 段位 | 国 | 勝敗 | |
---|---|---|---|---|
1 | アーヴェド・ピットナー | 5d | ドイツ | 5-0 |
2 | ダヴィデ・ベルナルディス | 4d | イタリア | 4-1 |
3 | デニス・ドブラニシュ | 4d | ルーマニア | 3-2 |
4 | ジョルジェ・ジゴイ | 2d | ルーマニア | 3-2 |
5 | リュバン・ヴィルエルム | 1d | フランス | 3-2 |
6 | エムレ・シナル | 2d | ドイツ | 3-2 |
昨年2位のピットナー5dが優勝した。現イタリアチャンピオンで伸び盛りのベルナルディス4dが2位となった。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年2月13日 ]
第5回欧州グランプリファイナル、シクシン4pが優勝
第5回目となる欧州グランプリファイナル大会が1月20-27日にかけてオンラインで開催された。グランプリファイナルの参加者は、欧州囲碁連盟(EGF)から指定を受けた大きな大会の成績優秀者のうち、合計ポイントが上位の16人。新型コロナウイルス禍を反映して、ポイント計算の元となった大会の合計数はわずか6大会となり、2019年の15大会から大幅に減少している。
今回のグランプリファイナル大会は、本来フランスのグルノーブルにおいて開かれる予定だったが、直前になってオンライン開催に切り替わった。欧州社会そのものはコロナとの共生に向かっているものの、欧州全体からの参加がある大会だけに、フランスではロシア製ワクチンのみを接種した者の入国が認められない、といった比較的強い制約があることが問題となった。
8人に人数を絞る予選リーグ戦においては、タンギー・ルカルヴェ1p(フランス)、スタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)、アントン・チェルニフ7d(ロシア)といった有力者が脱落。EGFプロのイリヤ・シクシン4p(ロシア)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、アリ・ジャバリン2p(イスラエル)、マテウシュ・スルマ2p(ポーランド)に加え、ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、ニコラ・ミティッチ7d(セルビア)、オスカル・バスケス6d(スペイン)が枠抜けした。
決勝ステージの結果は以下の通り。
アルテム・カチャノフスキー2p | ミティッチ | リジー | シクシン |
ニコラ・ミティッチ7d | |||
マテウシュ・スルマ2p | リジー | ||
パヴォル・リジー2p | |||
オスカル・バスケス6d | ジャバリン | シクシン | |
アリ・ジャバリン2p | |||
ルカシュ・ポドペラ7d | シクシン | ||
イリヤ・シクシン4p |
決勝に上ったのはリジー2pとシクシン4p。シクシン4pが安定した打ち回しで、第2回、4回に続く3度目の優勝を飾った。
なお、決勝ステージ1回戦ではミティッチ7dがカチャノフスキー2pに見事な勝利を収めた。準決勝ではリジー2pに敗れたものの、見事4位に入賞した。
グルノーブル囲碁大会、囲碁・スキーキャンプが開催
1月末から2月頭にかけて、仏グルノーブルでは国際囲碁大会に続き囲碁・スキーキャンプが開かれた。
対面式で開かれた大会には、合計で100人以上が参加。各自の参加にあたっては、ワクチン接種証明が求められた。
優勝は韓国のキム・ドヒョプ7d、2位はルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、3位はコルネル・ブルゾ6d(ルーマニア)。これに同率4位で地元の今村亨3d、デニス・カラダバン5dが続いた。
[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年1月11日 ]
第6回グランドスラム大会
第6回目となる欧州グランドスラム大会が12月16-19日にかけてセルビアの首都ベオグラードにおいて開かれた。先日オンラインでの欧州選手権が24人を集めて開かれたばかりであるが、グランドスラム大会では8人の欧州囲碁連盟(EGF)所属プロに加え、最近の大会での成績などを加味したボーナスポイント、予選会の結果により更に8人が選抜され、合計16人で、ノックアウト方式で争われる。中国のスポンサーによる後援もあり、優勝賞金は1万ユーロと、欧州選手権を大きく上回る。オミクロン株の出現やそれに伴う各国での制限措置の厳格化などが始まり、出場予定だったウクライナのアンドリー・クラヴェッツ1p(ドイツ在住)が直前で参加を取りやめるといったアクシデントもあったものの、なんとか対面式での開催にこぎつけた。
一回戦では、欧州プロ7人と、今年のプロ入段手合で決勝まで進んだポドペラ7dが勝ち抜き。二回戦では、シクシン4p(ロシア)、カチャノフスキー2p(ウクライナ)の常連に加え、ここのところ大きな大会に出場していなかったスルマ2p(ポーランド)と、ルカルヴェ1p(フランス)が勝ち準決勝に進んだ。準決勝では、カチャノフスキー2pが安定した石運びでスルマ2pを下す一方、ルカルヴェ1pが素晴らしい内容でシクシン4pに中押勝を収め驚きを呼んだ。
決勝ではカチャノフスキー2pが手厚く打ち進め、優勝を飾った。
パヴォル・リジー2p | リジー | ルカルヴェ | ルカルヴェ | カチャノフスキー |
マティアス・パンコケ6d | ||||
アレクサンダー・ディナーシュタイン3p | ルカルヴェ | |||
タンギー・ルカルヴェ1p | ||||
アリ・ジャバリン2p | ジャバリン | シクシン | ||
バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d | ||||
ヴィクトール・リン6d | シクシン | |||
イリヤ・シクシン4p | ||||
マテウシュ・スルマ2p | スルマ | スルマ | カチャノフスキー | |
デュシャン・ミティッチ7d | ||||
オスカル・バスケス6d | ポドペラ | |||
ルカシュ・ポドペラ7d | ||||
スタニスワフ・フレイラック1p | フレイラック | カチャノフスキー | ||
ニコラ・ミティッチ7d | ||||
コルネル・ブルゾ6d | カチャノフスキー | |||
アルテム・カチャノフスキー2p |
[ 記事:野口基樹 ]